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【知床世界自然遺産20周年インタビュー】漁師から観光船へ。「今」の知床を伝えるために。

知床らうすリンクル 野田 克也

 世界自然遺産・知床。羅臼町で瀬渡し船や観光船を運航する「知床らうすリンクル」の野田克也氏。羅臼町出身で、20歳で定置網漁に従事。その後、漁師を引退し、観光船を通じて知床の自然の「今」を発信する野田氏。2025年に世界遺産登録20周年を迎えた知床で、彼が感じている変化と、未来への想いを聞いた。


世界遺産登録20周年、変わらぬ営みと新たな価値

 世界遺産登録から20年。私個人の生活や、かつて漁師として海に出ていた日々に、劇的な変化があったわけではありません。厳しい自然と共に生きるという点では、昔も今も変わらないです。しかし、知床国立公園が世界自然遺産として認められたことで、日本国内だけでなく世界中から注目される場所になったことは間違いありません。それは、この土地が持つ普遍的な価値が、世界的な基準で認められた証でもあります。

漁師から観光船へ。「見せる」ことへの転身

 私が観光船を始めたきっかけは、自分自身が漁師として見てきた知床岬方面の素晴らしい景色を、もっと多くの人に見てほしいという想いからでした。 「羅臼町としてここを発信していないのはもったいない」。そう強く感じました。 最初は個人で始めましたが、7年前に法人化し、現在は「知床らうすリンクル」として運航しています。

 近年は「ヒグマクルーズ」として知られるようになりましたが、当初は特にヒグマを目玉にしていたわけではありません。ただ美しい景観を見せる中で、ヒグマに出会う機会が増え、お客様が喜んでくれる姿を見て、自然と今の形になっていきました。

衰退する漁業と、これからの観光の役割

 今、羅臼の漁業は厳しい状況にあります。地球温暖化の影響で海水温が上がり、獲れる魚種も変わってきました。かつてのように魚が獲れなくなり、漁獲量は減少傾向にあります。 漁業の衰退は、町の人口減少、特に若者の流出に直結します。このままでは町が過疎化してしまうのではないかという不安は常にあります。

 だからこそ、観光には大きな可能性があると考えています。 アジア圏だけでなく、欧米からの観光客も増えており、インバウンド需要が伸びています。 かつて漁師だった私が観光業に携わることになったのも、ある意味で時代の必然だったのかもしれません。私が漁師をしていた頃と比べると、トドの群れを見る機会が減るなど、自然環境の変化も肌で感じています。そうした「今」の知床の姿を、ありのままに伝えていくことが私の役割だと思っています。

課題と未来への展望

 冬の観光、特にトドクルーズや流氷観光でも、課題はあります。 流氷が来るとトドが見られなくなるというジレンマもありますが、それも含めて自然。 また、宿泊施設の不足も深刻な問題です。羅臼に泊まりたくても宿がなく、仕方なく町外へ流れてしまう観光客も少なくありません。冬場の公共交通の便の悪さも含め、観光客を受け入れる体制にはまだまだ改善の余地があると思います。

 最後に、これからの羅臼に必要なのは、ただ景色を見せることだけではなく、現状を知ってもらうことだと思います。 かつて漁業被害をもたらしていたトドの姿も、観光資源として活用することで、共存の道を探ることができるかもしれません。羅臼の自然の豊かさと、直面している環境変化。その両方を伝えながら、次の世代にこの素晴らしい知床を残していきたい。それが、海と共に生きてきた私の願いです。

Prologue of the adventure

羅臼シレココ
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